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【コラム】働き方改革特集「残業上限規制」
【特集コラム】
準備は出来ていますか?いよいよ迫る!中小企業への残業上限規制
◇残業上限規制とは?
『従来の労働基準法(ビフォー)』
「使用者が法定労働時間(原則、1日8時間 週40時間)を超えて労働させた場合、同法32条違反として処罰の対象になり得るが、労働者代表と時間外・休日労働協定(三六協定)を締結し、所轄労働基準監督署に届け出れば、その協定で定めた範囲内で延長し労働させても法違反に問わない」
時間外労働の原則は「月45時間 年360時間」但し特別条項付き36協定を締結すれば1年で6ヶ月を超えない期間内で前述の原則を超える時間内での労働時間を設定することができる。
もちろん、事業主には「過労死ラインを意識する」等安全配慮義務が課せられていましたが、過労死ラインには法律的な規制が設けられていなかったため、事実上、残業時間数が青天井に設定できることが問題視されていたわけです。
『改正労働基準法(時間外労働の上限規制)(アフター)』
- 三六協定によって延長できる労働時間の上限を罰則付きの法律で規制する罰則は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 残業時間の上限は1カ月45時間(対象期間3か月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)1年360時間(同320時間)
- 特別条項を付記した場合であっても、
- 年間の時間外労働は月平均60時間(年間720時間以内)であること
- 休日労働を含み、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間のいずれかの月平均時間外労働時間が80時間を超えないこと
- 休日労働を含んで単月は100時間未満であること
- 特別条項を適用できるのは年6回まで
この絶対的上限規制は、特別条項の有無にかかわらず、遵守しなければ罰則の対象となります。
◇よくある質問
三六協定の締結について
- どんな場合に例外(特別条項付三六協定)を設けることができるのですか?
- 特別の事情が「臨時」で「具体的」であること必要です。
例)
・予算や決算業務
・ボーナス商戦など業務繁忙のため
・大量受注による納期逼迫のため
・機械のトラブル対応
詳細は厚生労働省の「時間外労働時間の限度に関する基準」をご確認下さい
いずれにしても今回の法律で「当該事業場における通常予期することのできない業務量の増加等」と明記されておりますので厳格な適応が予想されます。 - うっかり三六協定の届け出を忘れてしまいました。罰せられますか?
- 三六協定は労働基準監督署に届けた日から効力が発生しますので効力のない期間は違法となります。尚、「うっかり届け出を忘れた」という理由だけで労働基準監督署から罰則を科されることはありません。忘れたと気ずいたら直ちに届け出ましょう。但し、届け出を忘れたことに気がついているのに、届け出をせず放置している場合は違法の程度が悪質と判断され、是正勧告の対象となるため注意しましょう。
- 三六協定の書式が新しく変更になったとききます。新書式による労働基準監督署への届け出はいつになりますか
- 中小企業の場合、新書式による労働基準監督署への提出は2020年4月1日以降となります。
新書式(様式第9号、第9号の2)は、厚生労働省のサイトからダウンロード(別ウィンドウを開く)してください。特別条項ありの場合は「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」を具体的に記載する必要があります。
早めに業務の棚卸を行い、どういったケースを特別条項とすべきか確認しておきましょう。
残業上限規制の運用について
- 業務時間終了後教育研修を実施しました。労働時間に含まれますか?
- 業務上義務付けられていない自由参加のものであれば、その教育研修の時間は労働時間に該当しませんが、就業規則で教育研修へ不参加の場合減給処分の対象とされることが明記されている等、参加が強制されている場合は労働時間(この場合残業時間)にカウントされます。
《労働時間に該当する事例》- 使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課される等、実質的な業務指示で参加する研修
- 自らが担当する業務について、予め先輩社員がその業務に従事しているところを見学すしなければ実際の業務に就くことが出来ないとされている業務見学会社での「研修・教育訓練」の時間が労働時間に該当するかどうかについては予め労使で取り扱いを確認し話し合うようにしておきましょう。
- 管理職にも残業上限規制は適用されますか?
- 管理職には残業上限規制は適用されません。そもそも労働基準法は労働者の健康や権利を守る目的の法律であり、経営者に近い立場の管理職には適用されないのです。但し、ここでいうところの管理職とは法律上の管理監督者のことであり、いわゆる名ばかりマネジャーや店長は含まれませんので注意が必要です。法律が規定する管理監督者とは
- 経営者と一体的な職務を行っていること
- 出社、退社や勤務時間に厳格な制限を受けていないこと
- その地位に相応しい待遇がなされていること
上記にあてはまらない「管理職」は労働基準法が適応され、今回の残業上限規制が適用となります。また、今回の働き方改革関連法の一つ「労働安全衛生法」では管理職を含めた全従業員の労働時間管理・把握が義務化されています。今回の新ルールでは管理監督者であっても医師による面接が義務づけられています。紙によるタイムカード方式などでは実務上義務を果たすことができにくいため、早急に勤怠管理システムの導入が求められています。
- 三六協定の期間中、社員を適用除外・猶予業務から適用業務に転換しました。その際の運用はどうなりますか
- 上限規制の適用が猶予される業務は
1.建設業務
2.自動車運転の業務
3.医師
4.鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
いずれの場合も改正法施行後5年間(2024年3月末)まで猶予されます。
ご質問のケースでは協定で定めた延長できる時間から適用除外猶予業務で行った時間外労働の時間を差し引いた残りの時間数の範囲内でしか時間外労働をさせられなくなります。いずれにしても、長時間労働の削減や過重労働による健康阻害の防止のために導入された上限規制ですから、適用除外・猶予の業務であっても改正法の主旨を十分理解し対応する必要があります。